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だから愛しています”ご主人様” 赤

こんばんわ、おまたせいたしました

怒涛の日常編です


キャラクター毎編もそろそろおわりですね


それではどうぞ。




赤の一日




玄関扉を開けると、待ち構えていたかのような太陽光に照らされる。
赤「まだまだ、あついなぁ」
私は手を額に当てて陽射しを避けながら、空を見た。
赤「わ、綺麗」
遠くに見える真っ白な入道雲。
夏の空はとても、気持ちが良い。
私はトントンと土を蹴って靴を履く。
赤「わっとと」
夏空を見上げながらやったものだから、バランスを崩してしまった。
両手を広げて体勢を直す。
赤「注意注意っ」
日傘をさそうとしてやめる。
あついけどこのまま行こう、日焼け止めはちゃんとぬってある。
せっかくの天気なのに、陽を浴びないのはもったいない。
今日は村に下りてお花を見せてもらいに行くつもりだった。
お花はいつも移り変わり。
咲く花があればかれる花もあるけれど、それはまた次につながる種を残す。
だから私は咲く花もかれる花も、美しさは変わらないのだと思う。
ゆえに何度も足を運ぶ。
お花たちはいつでも違う顔を見せてくれるから、飽きないのだ。
褐「お、赤か。また降りるの?」
タオルを首に巻いてランニングをしていた褐が、丁度屋敷に戻ってきた。
最近、屋敷から村へいく事を「降りる」と表現するようになった。
山を降りる、から略されたものだ。
赤「うん、おばあちゃんのところに、お花を見にね」
褐「そっか、好きだねぇ。週一くらいで通ってるっしょ」
赤「うーん。多いときでも月に三回くらい、かな」
褐「ありゃ、そんなもんか」
ま、それにしてもよく行くもんだなんて褐は笑う。
ちらりと、褐が二つ折にした一枚の紙をもっているのが目に入った。
赤「それは?」
褐「ん、今日は早起きだったからさ、村まで走ったんだよ。で、村の人にこれ貰ったんだ。ご主人様にわたしといてくれってさ」
時たまこういうこともある。
村での簡単な連絡事項などが、こうして渡されたりするのだ。
褐「そいじゃぁ私はシャワー浴びてくるから、またね」
赤「うん、またね」
そう言って背を向けた褐だが、何か思い出したようにくるっと振り返った。
褐「言い忘れた」
赤「ん?」
褐「いってらっしゃいっ!」
赤「あは、いってきますね」


山を降りるのに二十分、そこから田んぼ道を抜けるのに二十分。
村までは、中々に遠い。
赤「うーん、やっぱり日傘もってきたほうがよかったかなぁ」
ハンカチで額の汗を拭いながら、苦笑い。
おもったより暑かった。
赤「でももう山下りちゃったし……」
今から戻るのはちょっと気が引ける。
仕方ない、木陰に隠れながら進むとしよう。


そんなこんなで到着した私は、いつものお家に上がらせてもらう。
中では見知った村の人たちが、既にお話をしていた。
私はその輪の中に入れてもらって、こうしてひと時を過ごす。
ここでの話は私にとって面白い物ばかり。
もちろんお花の事もあるけれど、昔話だったりだとか、孫がどうしただとか、話の種は尽きない。
このゆっくりとした空気が、私は好きだった。


到着したのが朝の八時位。
いつもなら、昼前には屋敷へと戻る。
お昼ごはんはやっぱり、ご主人様と食べたいから。
赤「そろそろお暇しますね」
時計の針が十一時を指したのを見て、私は席を立つ。
今日は午後から村の人たちがあつまって、この家で将棋会があるらしい。
多分褐がもっていたあれは、この件について書かれていたのだろう。
一応私も誘われたが断った。
そもそも将棋のルールもわからないし、お昼はもどりたいし。
お茶を片付けようとした時、来客を示すベルが鳴った。
そうして入ってきたのは――
女「やっほー赤ー」
銀「やっほっほー」
我が家の人たちだった。
女様と銀ちゃんに続き、青ちゃんに桃ちゃん紫ちゃん、金ちゃんまできていた。
さすがに私は驚いた。
赤「ど、どうしたんですか?」
女「将棋すんのよ将棋! あたしこれでも自信あんのよねー」
ふっふっふと、女様は腕まくり。
なるほど、どうやら例の将棋会に参加するつもりらしい。
赤「皆さん参加するんですか?」
得意だと豪語する女様や、ゲームの得意な青ちゃんはまだ分かるけど、他のメンバーが将棋をしているところなど見たことがない。
銀「ふふふ、ルールはさっきしっかり覚えてきたので大丈夫です……っ」
紫「私は良く分からなかったけど、面白そうなのでついてきただけだよっ!」
えへへ、なんて紫は楽しそうに笑う。
桃「恥ずかかしながら、実は私もゆかりんに同じ! かんでない!?」
青「かかし。かんでる」
桃「やややや、かみ具合がいつもと違ったので気付かなかったっ」
と、騒ぎながら皆は先ほどの部屋へと入っていく。
赤「金ちゃんも将棋ですか?」
金「付き添いですわ。ご主人様が『このメンバーじゃ何するか分からないから監督してやってくれ』と言われましたので」
赤「あはは、特に元気なメンバーですからね」
不満そうに金は溜息を漏らして経緯を教えてくれた。
――朝、私が出た後の話。
褐が持ってきた連絡を見た女様が「私参加しよ!」と言い出したのが始まりだったらしい。
で、面白い事があるのかとぞろぞろ皆が集まってきて、銀ちゃんが「私も行きます!」とか言い出すと、じゃぁ私も私もって紫ちゃんと桃ちゃんが名乗りをあげ、青ちゃんがご主人様に「行ってもい?」と確認して瞬く間に五人が決定。
しかしメンバーがメンバーだけに心配したご主人様が、金に監督役を頼み、六人もの人数が村に降りてきたそうだ。
ちなみに男様は「溶けるから行かん」の一点張りだったらしい。
金「ご主人様の久しぶりのご用命が嬉しくてついつい承諾してしまいましたけど、ご昼食を作ってさしあげたかったですわ」
考える事は同じらしい。
金「赤はどうしますの?」
同じ気持ちの金ちゃんがきてるのだ。帰りたいなど言おうとも思えない。
赤「残ろうと思います、せっかくだから皆の将棋も見たいし」
金ちゃんは少し驚いた顔で言う。
金「気になさらなくて良いのですよ? わたくしは命を受けて嬉しいから来ているだけですから」
赤「いえ、私も自分の意思ですから」
くすっと、私達は笑う。
金「では一緒に」
赤「はい」


集会所となってるだけあって、このお家は中々に広い。
というより、この辺りは有り余る土地のせいか、この国の平均サイズな家屋と比べて大きい家ばかりなのだ。
その中でもさらに、このお家は大きい。
今でこそこの家に住んでいるのは老夫婦二人だけだが、昔は大所帯だったそうだ。
大きいのは、その時の名残。
お昼を終えると、続々と村の人たちが集まってきた。
女様達は将棋会に向けて、実戦で練習中だ。
それを背に、この大きな部屋の縁側で、私と金ちゃんは座っている。
赤「そういえば、なんでこちらでお昼を?」
ふとおもった疑問を投げかける。
将棋会は午後からだ。ご主人様にお昼を作りたいのなら、その後でもよかったのではないだろうか。
金「女様達が早く行きたい行きたいって騒いだからですわ」
赤「あはは……なるほど」
なんとなく、その光景が目に浮かぶ。
金「綺麗なお庭ですわね」
柔らかい風がふいて、チリーンと風鈴が音を立てた。
赤「はい。私もお手入れのお手伝いをさせてもらってるんですよ」
金「なるほど」
金ちゃんはちょっと首を傾げてから――
金「うーんと……あれですか?」
お庭の一角を指差す。
赤「わ、すごい」
そこは丁度、私が一からガーデニングをさせてもらっている場所だった。
赤「よく分かりましたねー!」
金「赤のお花は、お屋敷で何度も見てますから。なんとなく、似た雰囲気を感じただけですわ」
私はちょっと嬉しくなった。
その場所は取り立てて違和感のある場所ではない。
そこにしかないお花が植えてあるわけでもなく、大きな特徴があるわけでもない。
他の人が単独でガーデニングをしているスペースだっていくつもある。
にもかかわらずあの一角を見つけてもらえたのだ。嬉しくないはずが無かった。
金「わたくしお花は詳しくありませんけど、例えばお屋敷の中庭に銀の匂いがするように、手を加えた場所にはその人の心が見え隠れしますわね」
赤「そうですね。そういった微妙な違いこそ、人の手によって作られたものの魅力なのでしょうか」
金「えぇ、面白い所ですわ」
金ちゃんはじっと、その庭をみつめた。
その横顔は、女の私から見てもとても綺麗だった。


女「まだ負けてないよね!?」
銀「中合いにつかえる間駒もないですし、詰めじゃないですか?」
女「はっ、間駒か……。さすが銀、これを見よ! ほら、歩! これでまだいける!」
青「二歩」
女「きゃああああ!!」
桃「え、負け!? これ負けなの!?
銀「ですねー、二歩は禁手なので負けです。というかこの手をなしにしても、打つ手なしで積みですけどね!」
紫「おー、青ちゃんの勝ちだっ! ぱちぱち」
後ろからそんな悲鳴と騒ぎ声が聞こえて、びくっと振り返る。
赤「にぎやかですね」
今まで対局中だったから静かだったようだ。
金「…………はぁ、今日はこの庭を楽しめなさそうですわ」
苦笑いする金ちゃんだが、別段嫌なわけではないようだった。


将棋会は終始大盛り上がりだった。
女様や桃ちゃん紫ちゃん達はもちろんのこと、村の人たちもいつにもまして騒いでいたのだ。
親睦会としては大成功だったと言える。
その中で――
――若い子がいてくれると楽しい、と何度聞いただろう。
それが少し、心にひっかかる。
赤「それでは、またきますね」
私達は片づけが終えて、その家を後にした。


夕闇に染まる道を歩いて、私達の家へと帰る。
女「くっそー、もうちょっと勝てないもんかなー」
女様は口をアヒルのようにしながらそう言った。
紫「あは、女様黒星の方がおおかったですもんねっ」
女「ぐさりっ」
銀「まぁでも、最初の青との一戦を除けば、それなりに善戦してましたよね」
女「でも銀にも負けたーくやしいー」
銀「ふっふっふ、私これでも戦略家なのですっ」
紫「銀ちゃんかっくいーっ」
鼻高々ーと胸をはる銀ちゃん。
桃「青ちゃんは強かったったたたねっ! かかんだっ」
金「そうですわね、一番勝ってました?」
青「たぶん」
女「青師匠! あとでこっそり将棋おしえてくだせぇ!」
青「うむ」
女「よし、これで次は勝てるな」
にやりと、まるで悪――いやいや、含み笑いをする女様。
赤「次はいつなんでしょうか」
あるなら私も参加してみたいなと思った。
あれだけ楽しそうだったのだ、見ているだけとはもったいない。
桃「むー、次は未定だって言ってた気がする!」
銀「ですねー。ま、さすがにあれだけ集まるのは大変でしょうし」
女「あー、んだね」
あれだけ集まったのは、あくまで偶然だった。
大抵の人は仕事があるし、サラリーマンってわけでもないから土日が休みになることもない。
そんな人ばっかりな上に人口がそもそも少ないとくれば、あぁも集まるのは非常に珍しいのだ。
女「わたしが主催してやるか、そうすれば皆くるな!」
紫「おー、女様やる気満々だ」
女「ふふふ、今日の戦いで燃えたのよ!」
金「燃えるのが早いと、消えるのも早いですわよね」
青「一過性」
女「そんなことはない! ……多分」
赤「あはは、続くと良いですね」
その方が私は嬉しい。
だって、きっと皆喜ぶから。


夕食を終えて夜。
私は月明かりの差し込む中庭沿いの廊下を歩きながら、ご主人様の部屋へと向かっていた。
そう、今日は夜係の日なのだ。
赤「ご主人様、赤です」
部屋の前に立って、軽くノックをする。
男「どーぞ
赤「失礼します」」
中に入ると、ご主人様はいつも通りパソコンの前に座っていた。
見慣れはしたものの、あれほどしっくりとくる図もそうはない。
男「赤、ちょいこれ見てみろ」
赤「?」
ご主人様はパソコンの液晶画面を私に向けた。
赤「これ、は?」
男「自転車買おうと思う。もっと早く気付くべきだったんだが、うち自転車ないだろ」
赤「ご主人様が乗るんですか!? わぁ、ちょっと想像できないですねっ」
ご主人様が自転車に……うーん、どんな姿だろう。
男「いやいや、俺は多分乗らないよ。っていうか、今買おうと思ったのは赤のな」
赤「はいっ!?」
突拍子もない事を聞いた気がする。
赤「私に、ですか?」
男「そ。毎度村まで歩くの大変だろ」
赤「い、いえ。歩くのも楽しいですよっ」
ぶんぶんと腕を振る。
買ってもらうなんてそんな、とんでもない。
男「む、余計なお世話だったか」
ふむ、と男様は困った顔をする。
赤「そんなことないです! 自転車があれば行き帰りが非常に楽になりますし!」
片道で一時間弱もかかるのだ。
足腰に自信はあるものの、自転車があれば非常に助かるのは当然だった。
男「あぁ、遠慮はしなくていいぞ。お礼だお礼」
赤「お礼だなんてそんなっ」
男「んーっと」
赤「気にしなくて大丈夫ですよ」
男「まぁ赤ならそう言うよなぁ」
ご主人様は少し考えてから。
男「あれだ、ご近所付き合い要員だからな、赤は。村まで一番通ってるのは赤だし、おかげで村八分にされなくてすんでる。うむ、これは趣味兼仕事と言えるな。というわけで、いわば経費だ」
赤「なっ」
ご主人様は、最近私達の考えをなんとなく見抜くようになっている。
如何にもな理由をつけて、私達に遠慮させないつもりなのだ。
赤「む、むぅ」
男「な、だから気にすんな」
赤「でもですねご主人様。ここは山です。自転車での走行は難しいですよ?」
一応道はあるものの、コンクリートで舗装されているわけではない。あくまで「ちょっと綺麗な山道」だ。
私が知る自転車は、いわゆる「ママチャリ」というものらしいが、あれではここを走れるとは思えない。
ふふ、簡単に落とされませんっ。
実は私も意地だった。
男「そこでこいつだ。マウンテンバイクと言う。荒い場所でもちゃんと走れるんだなこれは」
とんとん、とディスプレイを叩く。
私の知っているソレとは大きく異なる形の自転車だった。
何より、前にカゴがない!
男「いやまぁカゴあったら邪魔だろうし」
赤「そ、それではものの持ち運びが……」
男「安心しろ、さすがに重いのは難しいが、一時間歩いて持ち運びできる程度のものならなんとかなる。あ、ほらこれみろ、カゴって取り付けできるみたいだぞ」
赤「スイカ! スイカみたいなのをもらったらどうしますか!」
男「あー、それはきついけど、まぁめったにないだろ。というかスイカ持たせて歩かせないだろ」
赤「む……」
どうあっても買うおつもりらしい。
……正直嬉しいのだけど。
自転車があれば楽っていうのもそうだが、何しろご主人様からのプレゼントなのだ。
表では遠慮している反面、やはり買ってもらいたい。
あぁ、私ちょっと卑しい女なのかな……あう。
男「よし、買う。決まり。デザイン選べ」
赤「あ、あう」
結局最後には断れず、自転車を選んでしまう私であった。


スカートでも乗れて、山を昇る時のために電動アシストがついて、軽い物が運べるように前輪に台座がついて。
本当に驚いたが、探せばある物だ。
マウンテンバイク本来のスポーツをするという点からは、微妙にはなれてしまっているようだが。
赤「こ、これなら……あ、でもお値段は……?」
男「見せん!」
赤「見せてくださいっ」
カチカチッとご主人様がマウスを動かすと、画面がデスクトップというところにもどってしまった。
男「もう注文しちまった。はい、おわり」
赤「ご主人様ーっ!」
ご主人様の肩を揺すって抗議する。
男「はっはっは」
勝ち誇ったようにご主人様は笑うだけだった。
赤「私のお給料から引いておいてくださいね!」
男「経費なのにそんなことするわけないだろ?」
赤「……もう」


とりあえず自転車の件は諦めた私は、ちょっと拗ねながら、でも内心喜びながら、お茶を入れる。
男「まぁ、あったほうが何かと便利だろ」
赤「そうですけどね」
男「そもそも自転車がないってのがおかしいんだよな、人里離れてるのに」
赤「車あるじゃないですか」
男「俺とメイド長のアイツしか運転できないだろ」
赤「むぅ」
私は――いや私達は別に、歩きで駅までいったり、買い物に出かけたりするのは苦だと思ってなどいない。
車だって、女様やご主人様の気が向いた時につかう程度だ。
こうしていられる事それ自体が幸せで、歩いて移動することに楽しみすら覚えている。
もっと早い移動手段がほしいと思ったことなどない。
今まで誰もこの家の移動手段に異議を唱える人はいなかったのがその証明だ。
男「ところで、今日の将棋会はどうだった?」
男様はお茶を啜りながら、そう聞いた。
赤「大盛り上がりでした。青ちゃんが一番強かったんですよ」
男「なるほど、あいつゲームの類は上手かったからな。赤もやったのか?」
赤「いえ、私は見ていただけです。参加したのはえっと、女様と青ちゃんと、銀ちゃん、かな?」
男「銀のやつ、朝にルール覚えてただけだろ、ちゃんと試合になってたか?」
赤「女様に勝っていましたよ」
男「驚いた、覚えるの早いんだな。じゃぁそこそこ参加できてたのか」
赤「はい。心配だったんですか?」
男「ちょっとな。年配の人ってのはさ、将棋やら囲碁やら、そういったものに年季入ってるだろ。一夜漬けならぬ一朝漬けで相手になるのかと、ね」
確かに、女様や銀ちゃんと比べて、村側の人達はとてもなれた手つきだったように思う。
男「てことは、受け入れてもらえてたわけだ。うむ、良い結果だな」
赤「……ええっと」
ご主人様がどういった意味でいってるのか図りかねて、言葉を濁す。
男「こう言うのなんだが、この村って過疎化が進んでるだろ。年配の人ばかり残ってる」
赤「あ、はい」
たしかに都市部と比べれば、違いは一目瞭然だ。
男「その中に若い子が入ればさ、きっと嬉しいんだと思うよ」
――若い子がいてくれると楽しい、と何度聞いただろう――
赤「……はい」
男「でもほら、受け入れるかどうかは別の話で。村っていう一つの括りの中に、俺達がいきなり飛び込んできたわけだろ? そういうのってさ、元々この村にいた人から見れば、案外受け入れづらかったりするんだよ」
特にこういった小さな村とかは、と続ける。
男「だから今日みたいに盛り上がって楽しめたのなら、それは村に受け入れられたってことだろ。楽しむために手加減もしてくれただろうし。じゃなきゃ、年季の入った人たち相手に、一日勉強しただけの銀や、同じレベル程度の女が、まともに戦えるわけがない」
赤「……」
黙って、私はそれを考える。
男「それって、楽しむために皆が優しくしてくれたってことだからな」
もしもそこに排他的な気持ちがあれば。表面将棋会に受け入れたとしても、その試合は殺伐とした物になっただろう。
ご主人様の言う意味はなんとなくわかった。
出来上がり凝り固まった一つの共同体であるこの村に、確かに新しい人がいきなり入ってくれば拒絶される事はあるかもしれない。
だが。
赤「くす、ご主人様。とっくに私達、受け入れてもらってます」
男「そうだな。うん、そうだったな」
何故かご主人様は自重するように苦笑い。
男「人付き合いが特に苦手な俺だから。上手く輪の中にとけこめてるのかとか、必要以上に心配しちゃうんだよ」
よしよしとご主人様の頭を撫でる。
男「おい、別になぐさめられる場面じゃないだろ」
赤「勝手な、私の気分です」
男「ふむ」
赤「でも、ご主人様はどうかしりませんよ? ほとんど村の人と交流しないんですから」
男「む、困るな」
赤「今度一緒に、お花を見に行きましょう。きっと、楽しいですよ」
男「むぅ」
私達に対してはこうして弱音を吐いてくれるようにもなったご主人様だが、元々人と話すのは大の苦手。
そのためか、強引にでも連れ出さなければ彼はこの家からでない。
男「いいよ別に。お前らが仲良くやってればそれでいい。俺はここでのんびりする」
赤「だめです、ご主人様は私達の代表なんですから」
男「しらん」
赤「だめです」
わざと耳元でそういってやる。
こうすると、ご主人様はすぐ黙ってしまうのだ。
男「あーっもう」
と言って私から離れる。
男「今度な、今度」
赤「くす、はい」
面白くて、笑ってしまう。
男「けっ、こんな話しなけりゃよかった」
ご主人様はそっぽむいて、ベッドに倒れこんでしまった。
ご主人様はご主人様なりに、私達を心配してくれているのだ。
それは少し不器用な心遣い。
だがそれが、彼の良い所でもある。
赤「ご主人様っ」
男「なっ、ちょっ」
誰も見ていないのをいい事に、寝転がったご主人様の上に覆いかぶさる。
男「は、離れろっ」
赤「だめですか?」
男「だめじゃないけど――いや、ダメだ。うむ、だめだぞ」
赤「なんでですかー」
いつもとはちょっと違う私を自覚する。
ご主人様と二人だと、なんとなく甘えてしまうのだ。
この人は私達を助けてくれた優しい人で、お金を稼ぐセンスもすごい。
そんな一部分は秀でているのに、そのほかはからっきし。
でこぼこな性格な彼に、恩や義理などなくとも私は惹かれてしまう。
男「寝るぞほら」
赤「わっ」
覆いかぶさる私を隣におしやると、ご主人様はぶわっとタオルケットをかけて私をとらえた。
赤「あついですよぉ」
男「なら離れるんだな」
赤「やです」
男「あついんだろ」
赤「えい」
男「……」
腕に抱きついてみせると、ご主人様は停止する。
赤「あついですね」
男「俺は寝た。もう寝てる」
赤「わー、ずるいー」
男「ずるいってなんだよ、しるか」
こんな甘い時間が心地よくて。
赤「自転車、ありがとうございます」
男「……」
ご主人様はもう、寝たふりモードだ。
例えばここで首あたりを弄ってみれば起きるのだろうが、しかしそれではいじめすぎかもしれない。
うーん。
赤「私より先に寝たら、寝てる間に遊んじゃいます」
結局いじわるしてしまった。
男「な……、赤の方がずるいじゃないか」
赤「女の子だからいいんです」
男「……。ったく、ほら、起きててやるからさっさとねろ」
赤「はーい」
こうして私の夜は過ぎていく。


ご主人様は魅力的すぎる。
かっこいい所もあって、上手くない所もあって。
くっつくと離れようとするのに、いつでも心配しすぎなほど私達を心配してくれてる。
赤「ご主人様」
朝の四時。寝ているご主人様の顔を眺めながら。
かるくキスをしてやった。
起きてる時だと、私も大変だし。
せっかくの技術も宝の持ち腐れ。
いやまぁ、ほしくて手に入れた技術じゃないけど、ご主人様のためならば。
あ。
今寝てるってことは。
今なら使える!?
そーっと私は、ご主人様の下腹部に手を――
赤「っ!」
ご主人様の手が私の手を掴んだ。
男「……」
なるほど、おきていたのか。
赤「キスはよけなかったのに」
男「……」
あ、うわぁ、可愛いな、この人。
胸が痛いほどきゅっとなる。
こんな一面もまた素晴らしい。
私はその姿に免じて、手を引っ込めた。


あぁご主人様。
貴方はどこまでもお優しい。
不器用なそれは私を捕まえて放さない。
だから。


――だから愛しています、ご主人様――


赤fin


















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和むわあ…
たくさんの登場人物全員が主人公になりえる
だからこそ違った目線からだかぬしの世界を堪能できるっ
初めから読み返してもまた違った感情になりますね~
やっぱりオモシロイ!
更新ありがとうでした!

No title

やばい顔がおかしくなって戻らない(・∀・)ニヤニヤ
きゅんきゅんしてます❤

No title

赤も金も銀もみんな可愛いなw あ、もちろん男もね!

返事

>>土嚢
和み世界だらけですけどもね
そろそろ一波乱いれようかなともくろみ中
ありがとうございましたっ

>>(; ・`д・´)
ありがとうございますっ
でも顔は普通にしてくださいw

>>水無月
赤、金、銀、はすばらしい
かいててたのしいw
陛下のヒロイン化進行中でございます

No title

陛下、免許持ってたんだwww
イメージは高校中退~二十歳くらいだったから少し修正。

時々呼称が『男様』だったり『ご主人様』だったり変わるのは、メイドさんたちの個性?

No title

もうみんなかわええなぁ
俺的には黒が好きだが
やっぱ皆かわええわぁ

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プロフィール

あるてぃめっと☆るいるい

Name:あるてぃめっと☆るいるい
***
物語とか絵とかゲームとか、
色々つくることが大好きです。
基本は文章書き。

2014年4月以降で現在お仕事募集中です。
お気軽にご相談ください。
安くて早くて安心ね! を目標に。
メールのレスポンスは超早いです。

連絡先は以下です。
bagarana☆yahoo.co.jp
(☆を@に)

Twitterはこちら→Ul_Rui_Rui
(たぶんコレが一番頻度高いです。
 細かい情報は全部ここで済ませてたりする)

ニコニコ生放送もやってます
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よかったらみてやってくださいまし

以下は僕のpixivですわー



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