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だから愛していますご主人様―エクストラメイドデイズ!!―vol.2

こんばんは、あるてぃめっと☆るいるいです

大変長らくお待たせいたしました
だかぬし新作でございます

いつもの世界にも、たまには雨が降るでしょう
だから今回は少し、いつもとは違った空気

そんな世界も、ぜひとも、楽しんでいただけたらと思います


それでは、どうぞ!







だから愛していますご主人様―エクストラメイドデイズ!!―vol.2


雨の日と、少女達


 しとしとしとしと。
 屋敷の外では、雨が降っていた。
 強くはなく、弱くもない。
 雨はただ誰を気にするでもなく、気ままな体で草木をぬらす。
 カタカタカタカタ。
 でもそれは人も同じく。
 強ければ「ああ土砂降りだな」なんて思いつつ雨音が気になるし、弱ければ「そろそろ止むかな。もう外に出れるかな」なんて言って雨に手を伸ばしたりするけれど。
 この雨はそのどちらにも当てはまらないから、人は特別気にすることもなく、いつもの時を過ごしてゆく。
 だけどそれはあくまで、意識するかどうかの問題。
 『気分』というものには、天候はどうしたって変化を作らせた。
男「ふう」
 だからだろう。
 時間には少し早いけれど、俺はなんとなく気分が乗らなくて、ディスプレイから目を離した。
男「ん~」
 手を後ろで組んで腕を伸ばす。
 じっとパソコンに向かっていた体中の筋肉が、少しほぐれた。
 今日はもう、終わろう。


 腕をもどしてから、くるりと椅子を回して振り返る。
 部屋には、誰もいない。
男「誰かいるか」
 だから俺は、自室の扉に向かって声をかけた。
銀「はーい、おりますよー」
 銀は明るく返事をすると、俺の反応を待つことなくかちゃりと扉を開けて、部屋へと入ってきた。
銀「珍しく早いですねー、どうしたんですか」
男「どうもしない」
 俺がディスプレイに向かっている時はいつも、メイド達は部屋の外に立っていて、入ってこようとはしない。
 そう俺からお願いしたわけではないし、パソコンに集中しているとあまり意識することもないのだが、気づいてしまえばなんだか悪いかな、なんて気分になる。
 何度かそれを言った事はあるが、彼女達はそれを好きでやっているようなので、どうにもならなかった。
 とは言っても、時たまそういうものを無視して入ってくる事もあるのだが。この前みたいに。
男(まあ、それはそれで)
 好きにやってくれれば、一番良いと思う。
銀「どうもしない、なんてそっけないなあ、もう」
男「ただの気分だよ」
 言葉を交わしながらも、銀は既にお茶を入れる準備に取り掛かっていた。
 紅茶でも飲みながら一息をつきたい、と思っていた俺の心情を、言わずともわかっているかというように。
男「甘いのがいい」
 だから俺はあえてその『前提』には触れず、そのまま要望を伝える。
 それは少しだけ、いつもとは違う会話の流れ。
 普段の俺ならばきっとその前提に触れて、「すごいな、よく分かったな」なんて言葉を添えていただろう。
 それはそれで良いのだけれど、今日はなんとなく、そうただなんとなく、そんな気分ではなかったのだ。
 言葉を介さずとも意が伝わる、ということの心地よさに、やはり言葉なく俺は身を委ねたのである。
 きっとそれは、笑顔で紅茶をいれる銀もまた、同じく。
銀「はぁい」
男「っ」
 不意をつかれた。
 とろけるような甘ったるい声で、銀が返事をしたからだ。
男「……」
銀「うふふ~、こんな感じですかあ?」
男「甘いのは紅茶の方な」
銀「ええー? 私に、甘く奉仕してくれって言ってるのかと思いましたあ」
男「……」
 俺が訂正する前の時点で、既に砂糖を多めに入れていたあたり、分かっていてやっているのがよく分かる。
 まったく、タチが悪い。
男「普通にしろ、普通に」
銀「残念ー」


 パソコン用の椅子から立ち上がり、部屋の中央に置かれた休憩用のテーブルにつく。
銀「おまたせしましたあ」
 ふらりふらりと白い湯気を立てるティーカップを、銀は俺の前へ置いた。
男「……」
 またも、甘ったるい声で。
銀「ふーふーしてあげましょーか? ご主人様」
 答えも待たずカップに手を伸ばしていた銀の手を制する。
男「こら。普通にしろってば」
銀「いやですか?」
男「いやです」
銀「ああん、そっけない」
男「ったく……」
 銀は愉快そうに笑う。
銀「仕方ないですねえ」
 とりあえず、銀は引き下がった。
 そうして俺の前に座る――と思ったのだが、テーブルを挟んで反対側にあった椅子を、わざわざ俺の隣まで持ってきてから座った。
銀「ふふ」
 銀は自分用のカップを持つと、俺の口に近づけた。
銀「ふーふーしてくださいっ」
男「……」
 すぐに応えられなかった。
 その半分は呆れ、でも半分は、困惑。
 慣れた、なんていうのは結局“つもり”なだけで。
 こうした仕草にはどうにも、慌ててしまう。
男「……自分でやれ」
 なんとかそう応える。
銀「ああん、またそっけないー」
 ぷう、と銀はほおを膨らませた。


銀「いいですよーだ。自分でやっちゃいますもん」
 不満そうに口をとんがらせながら、銀は自分で、ふう、と息を吹きかける。
男「うむ」
 そうするべきである、と俺は毅然と頷いた。
銀「ぶう、そんなしっかり頷かなくてもいいじゃないですかあっ」
 銀は文句を垂れつつも、紅茶を口へと運ぶ。
 俺はほっと安堵した。
 銀の言うところの「ふーふー」なんて事をし合う、なんて気恥ずかしくて出来るわけがない。
銀「まったくっ」
男「まあまあ」
 俺はなだめつつ、カップに口を付ける。
男「ん、いい甘さだ。丁度良い」
銀「ふふふ」
 さっきまで不満そうだった銀は、打って変わって得意げな表情に。
 俺は、苦笑い。


 会話が途切れて、お互い静か。
 だからか。
銀「雨ですねー」
 特に話すこともないのだろう。
 窓の向こうへ目をやる銀は、頬杖をつきながらそう言った。
男「雨だな」
 俺も同じく窓の外を見つつ、相槌をうつ。
銀「あ、分かった」
男「ん?」
銀「今日はちょっといつもと違うなーって思ったら、雨だったからですね」
男「何が」
銀「ご主人様ですよう。私がお茶の準備しだした時、何も言ってくれないんですもん」
男「ああ。まあ、いいかなって」
銀「いいですけどー、っていうかそれはそれで嬉しかったですけどー。なんかちょっと、調子狂いました」
男「どこがだよ……」
 調子狂うどころか、いつものようにからかってきたくせに。
 やはりというか。銀は否定せず、くすくすと笑った。
銀「そっかあ、ご主人様でも、雨でセンチメンタルになっちゃうんですね」
男「そのつもりはないけどな」
銀「ふっふっふ、銀には分かります」
男「はいはい」
 実際、少しいつもとは違う気分ではあるので、俺は頷いた。
銀「あっ」
男「こんどはなんだ」
銀「こういう時こそ、襲い時かも?」
男「……は?」
銀「おセンチな今なら、甘ーいご奉仕も受け入れてくれるかなって!」
 銀はそう言って、顔を近づける。
男「お、おい」
銀「甘いのがご所望ですもんね?」
男「な」
銀「とびきり甘くしちゃいますよー? うふふふ」
 吐息が首に掛かるほど近づいてきたので、さすがに俺は押しのける。
男「甘いのは紅茶だけでいい」
銀「あらら」
 ちろっ、と銀は舌を見せる。
銀「なかなか攻め堕とせませんねえ」
男「堕とそうとすんな」
銀「ううん、私の誘惑じゃあ力不足ですかね」
男「いや、そういうのじゃないけど」
 否定して、後悔。
銀「おぉ? なんですかその微妙な反応」
男「い、いや、べつに」
 素直に頷いておけばよかった
銀「なんですかあ」
 銀の誘惑は、全然力不足じゃないということ。
 いつもいつもギリギリである。
 正直、本当にいつ堕とされても、不思議じゃない。
男「なんでもないっつの」


 二杯目の紅茶がなくなる頃。
銀「ふわあ」
 珍しく、銀があくびをした。
男「寝不足か?」
銀「あははあ、昨日ちょっと本を読んでいたら夜更かししちゃいまして」
男「銀も本なんて読むのか」
銀「わあひどい。読みますよう」
男「どんな?」
銀「うんとー……。こんなです」
 どこに持っていたのか、一冊の本を取り出す。
 官能小説だった。
男「あほか」
銀「ひどいなあ、官能小説だって、ちゃんと読めば面白いんですから」
男「そう、なのか……?」
銀「そうですよう」
 官能小説というものに手を出した事がない俺だから、それ以上は何も言えない。
 今後手を出す事もないだろうが。
男「ふうむ……。まあ、分かった。とりあえず眠いなら、昼寝でもしたらどうだ」
銀「昼寝ですかあ……。うーん、中庭使えないですし」
 銀はよく中庭で昼寝をするが、たしかにこの雨では使えない。
男「そこでいいだろ」
 だから、俺は自分のベッドを指差す。
銀「ほ、ほえっ」
 しかし予想外に、銀は驚いた。
男「む?」
銀「い、いいんですか……?」
男「あ、ああ。構わないけど……、どうした?」
銀「だって、ご主人様のベッドですし」
男「夜係の時はいつも寝てるだろう。何をいまさら」
銀「そうですけどお……」
 銀はしばらく迷ってから。
銀「ふ、ふふふ……。分っかりました。では、お言葉に甘えて」
男「あ、ああ……。変なことはするなよ……?」
銀「はあいっ」
 銀はすぐに、ベッドへともぐった。
男「夕食の時に起こせばいいか」
銀「自分で起きれますよう」
男「そうか」
 言葉を交わしつつ、掛け布団を直してやった。
銀「うふ」
男「何だよ」
銀「いえいえーなにもー」
男「ふむ」


 その後、銀はすぐに眠ってしまった。
 その寝姿をみているのも悪くなかったが、起こしてしまってはよくない。
 だから気分転換ついでに歩こうと思って、俺は自室から出た。
 もちろんわざわざ外にまで出る気はないが、この屋敷はむだに大きいから、すこし散歩をするくらいならば十分に可能である。
男「雨ねえ」
 廊下の窓の向こうも、当然の雨。
 見上げた空はどんよりと曇り、すぐには陽の光も見えそうにない。
 自室は空気が管理されているので気づかなかったが、廊下に出ると湿気を感じた。
 それに気づくと、何故だかすこし気温が下がったような気もしてくる。
 と言っても、寒いというほどでもなかったので、俺は上着を取りに戻るでもなく廊下を進む。
男「……しかし。どこ行くかな」
 元々アテもない。
 溜まり場になっている部屋に顔を出すのも悪くないが……、いや、そういう気分ではないな。
男「うーむ」
 適当に歩こうにも、どうして良いか分からなかった。
 一応我が家だというに、これでは歩くというよりは徘徊みたいになってしまいそうだ。
 自分の部屋にだけこもっているのがよく分かる……。
男「ああ、そうだ」
 軽く腹をさする。
 小腹がすいた。厨房にでも顔を出してみるか。


 厨房には、緑と桃がいた。
男「よう」
緑「ん」
桃「あれれれっ!? どうしたんですかかかっご主人様っ」
男「少し小腹がすいてな。何かあるか」
緑「丁度良い。今お菓子作っていたところ」
桃「ですです! 緑ちゃんに教えてもらってました!」
 言われて、甘い匂いがする事に気づく。
男「ほう、桃がか。何作ってんだ?」
桃「桃のタルトでっす! こんな雨の日は、お菓子作りもわるくないかなって!」
男「そうだな、外にでれないし」
桃「ですです!」
男「どうだ、調子は」
桃「たたたたぶん良好!」
 確認するように、桃はちらりと緑を見る。
緑「うん、大丈夫。もう少しで出来るから、そこで待ってて」
男「そっか。了解」
 俺は頷いて、適当に腰をかけた。


桃「どーぞめしあがれ!」
 カットされたタルトが差し出される。
 タルトの生地は丁寧に焼かれ、のせられた白桃との色の差が上品であった。
 見た目もさることながら、その甘い香りにもまた、食指の動きをそそのかされた。
男「ん、皆は呼ばないのか」
 せっかく作ったのならば、皆で食べれば良いのに、と思った。
緑「味見」
男「味見……?」
桃「ですです! これ、夕ご飯の後のデザートに出そうと考えていたのですっ」
 時計を見ると、五時を回っていた。
 おやつの時間、と言うには少し遅い。
桃「だから、味見です!」
男「ああ、なるほど」
 本来夕食時に出されるはずのものを、俺が先に食べてしまう、というだけではすこし決まりが悪い。
 だからあえて“味見”としたのである。
男「では」
 フォークで一口サイズに切り取って、食べる。
桃「どきどき」
男「うん、おいしい」
桃「やった!」
 桃らしい味がした。
 緑や金がデザートを作ると、甘さが控えめなものになることが多い。
 しかしこのタルトは、普段よりも若干、いや、かなり甘いのである。
男「桃らしいな」
 だがそれもまた、良し。
桃「おおおっ! 皆よろこんでくれるかな!」
男「そうだな」
桃「やった! 緑先生! 上手に出来ました!」
 桃は嬉しそうに緑に抱きついてほお擦りをした。
緑「うん」
 緑はそれでも表情を大きく変えることはなく、しばらくなされるがままであった。


 そのあと少しの間緑と桃の二人と話していたのだが。
金「あら、ご主人様」
男「よう」
 金と赤が厨房へと入ってきた。
赤「どうしたんですか?」
男「少し、お邪魔してた」
桃「味見してもらってました!」
 桃はタルトを自慢げに見せ付ける。
金「これはおいしそうですわね。桃が作ったんですの?」
桃「緑ちゃんに教えてもらいながらね!」
金「ふふ。これは食後が楽しみですわ」
桃「うん!」
 桃が嬉しそうなので、何よりである。
金「では緑、そのためにお夕飯を」
緑「うん」
 そこで気づく。
 金と赤は、夕食を作りに厨房に来たのだ。
 ということは。
男「じゃあ、俺は部屋にでも戻ってるわ」
 この場に男手は不要である。
金「そこで見ていてくださってもよろしいのに」
男「いやいや。本当に邪魔になるだけだしな」
赤「そ、そんなことないですよ」
 なんて言って引きとめようとしてくれたのだが、それでもやっぱりいづらいのである。
 俺はやんわりと断って、厨房から出た。


 行くアテはやはりなかったが、結局自室には戻らなかった。
 まだ夕食まで時間があるのに、今戻って銀を起こしても仕方がない。
 となれば、俺が足を運べるところは自然と限られてくる。
男「ここならいいな」
 書庫である。
 女曰く、高校以上大学以下の図書館、だったか。
 図書館というには蔵書の種類が偏っている気がするが……、個人の書庫としては十分な品揃えだろう。
 実家にいたときはレンタルの倉庫を借りていたのだが、やはりこうして並べた方が本は映える。
 この家に着てから、その光景が好きで、ぐんと本の量が増えた気がする。正直、読んでいないものも多い。
 俺はこの部屋が好きであった。
 部屋は二階まである――室内に階段がある――ので相当に広いが、大きな本棚がいくつもあるために狭苦しさを感じさせる。
 そんな特殊な感覚が、中々に心地よい。
 しかもその本は、概ね俺が集めたものばかりだ。
 自室とは趣向が違うが、それと同じくらい落ち着く場所である。
男「んー」
 薄暗い本棚と本棚の間を、適当に歩く。
 特に本を読む気はない。
 書庫の空気を味わっていたかった。
男「ん?」
 部屋中央のらせん状の階段の脇、戯れで設置したテーブルに、人の影があった。
褐「あれ、ご主人様っ」
男「褐か」
 褐といえば外、というイメージがあるが、実はこの部屋にいる時間も結構多かったりする。
 その理由はたしか、ずっと前に聞いた。
褐「ご主人様も読書ですか?」
男「いや、ちょっと寄っただけだ。手持ち無沙汰でな」
褐「あはは、雨ですからね。外にもでれませんし」
男「雨じゃなくても、外にはでないけどな」
褐「そっか、そういえば。外でなきゃだめですよう」
男「善処する」
褐「はい」
 褐は苦笑い。
 どうやら、その程度で俺が外に出ないことは、もう分かりきっているようだ。
褐「あ、もうご飯の時間ですか?」
男「いやいや。あと一時間弱はかかるんじゃないかな」
 褐時計を見上げてから、「この時間なら、そうですねえ」なんて言う。
 時間を忘れて本を読んでいたらしい。
男「悪いな、邪魔したか」
褐「いえいえ。そんなことは」
 そうは言うものの、読書の時間は邪魔しづらい。
 本を読む気ならまだしも、そうではないので、俺は書庫を出ることにした。
 去り際。
男「そういえば、他の子は? 夕飯係と桃は厨房にいたんだが」
 軽く屋敷を歩いていても見かけなかったので、聞いてみる。
褐「青と紫と茶と女様は、いつもの部屋でゲームをしていましたよ」
男「そうか」
 丁度俺が見かけていた以外の住人達の話を聞けた。


 俺は聖堂へとやってきた。
 やっぱり、こういう時は一人がいいな、なんて。
 横長の椅子に座りながら、少し強くなってきていた雨音に耳をよせる。
 石造りの場所だから、屋敷の方よりもさらに、肌寒い。
 上着を取ってくればよかったかな、と思いつつも、それはそれで億劫であった。
男「まあ、いいか」
 風邪を引くほどは寒くないし、どうせ少しの時間である。
 季節は、もうすぐ夏なのだ。
 雨が降っているのはつまり、梅雨だから。
 気温ははっきりと分かるほどに高くなっている。
 だからこんな日、こんな場所でも、それほど寒くはなかった。
男「……」
 しとしとしとしと。
 雨の音だけが、聞こえる。
 森閑として何も音がしないよりも、これくらいの方が安心できた。
 しとしとしとしと。
 雨はたしか、昨日からずっと振っている。
 これが終われば、もうじき夏。
男「溶けるのは嫌だなあ……」
 夏は体力が奪われるので、好きではない。
 でもそれは俺だけのようで、この家の住人は全員、夏が好きである。
 皆、本当に元気だなあ、と思う。
 しかしそれは良い事だ。
 この家の住人が元気で、明るければ。
 それはとても、良い事である。
 誰の事を気にするでもなく。
 思うが侭にあれば、それで。
男「……む」
 やはり、感傷的になっているのだろうか。


 続く雨の音は、包み込むようであった。
 暖かく、という感じではない。
 ただそう、隔離する、というような。
 雨の音で色々な音がかき消されて、より強固な一人の空間が作られる。
 聖堂は薄暗いから、なおさらだ。
 なんとも怪しげであった。
男「こんな日は……」
 雨の日には、怪しげな人が尋ねてくる。
 よくありがちな、物語の冒頭部。
 特にこんな山の中の家であれば、館モノのミステリーの舞台には十分なりえるはず。
男「いやいや」
 そんな設定で軽い妄想劇を繰り広げそうになって、やめる。
 馬鹿らしいというのもあったが、それ以前にこの家にはミステリーが、似合わない。
男「普通であれば、一番良い」
 物語は平坦であってほしい。
 誰が悲しむ事もなく。
 誰がつらい思いをすることもなく。
男「このままで、良い」


 だから。
黒「男様」
 どきりとした。
男「ん」
 全員の所在が分かっていた中で、黒と院長の二人だけ、場所がわからなかった。
 院長だけならまだいつも通りだ。
 あいつは神出鬼没だから。
 でも、黒も分からなかった。
 いつもならば俺の近くでずっと待機しているし、姿は現さずとも最近ではなんとなくわかるようになっていたのだが。
 今日だけは、それを感じなかった。
男「夕食か」
黒「それもあるが、その前に報告が」
男「報告?」
黒「うむ」


黒「白のドレスをまとった少女が五人。裏手の森にて発見された」


男「山の中で、ドレス?」
黒「そうだ。衰弱していたから、男様に確認する前に屋敷へと。すまない」
男「いや、それは構わないが……」
黒「それと――」


 物語は、平坦であってほしい。


黒「――少女達の肩には全て、一から五の、数字の焼印が押されていた」


 はたしてこの報告は。
 願いを揺るがすものなのだろうか。


男「そうか」


 夜の帳が、雨音とともに、屋敷を包んだ。



To be continued...
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おぉ…、あのこ達とも絡む、のか?

お疲れ様です。

新キャラって「貴方の為の娼婦」に出てきた方ですかね?と言うことは、洋館に話が移ると言う事ですか?。今後は茶の教育とか、金のやきもちとか、緑との料理対決とか…。まだまだ楽しみですね~。これから益々暑くなりますので体調管理に気を付けて頑張って下さいませ。

読んでみて、モイラの書き方に少し寄っているような?気がしました。上手く説明出来ないのですがw

No title

ゲーム作成お疲れ様ですっ!

久々の新作ですがあの子たちが絡んでいくのかな?

No title

平和は平和のままでいいんだけどなぁ
怖いなぁ・・・

はじめまして

だかぬしを番外編含め2往復してまだかなぁと覗いてみたら・・・!

陛下には何かしらの引力があるんでしょうか・・・
陛下のまわりにはこういう女の子ばかり集まりますね

No title

1~5て事はまさか。。

寝る前に読むんじゃなかった。。
続きが気になって寝れないじゃないwww

おお、新作来てたか
相変わらずほのぼのしてていいなと思ってたら、まさかの急展開
これからも目が離せないな

No title

まってましたああああああああ!
よみましたああああああああああ!

例のあの作品読んでない(´・ω・`)

初めまして

待ちわびてたのでコメント書かせていただきました。

今回の最後は娼館の方に出てたキャラですかね?続き楽しみにまってます。

No title

おおお・・・あれもやっぱりあなたの作品でしたか!

続きも期待しています!

No title

新作
感激
次作
期待

No title

娼館から召喚されたんですね分かります

No title

てめ、つまんねぇギャグ言うなw
不意打ちで笑っちまったじゃねぇかw

まさかのクロスオーバーか…
この後、女神様やらなんやらが出てきて時間軸をずらして多次元と融合させて気がつけば空隙と混ざっててetc…
なんか妄想がとまんねぇw

No title

おぉ
娼館のキャラ来ました

どぅ繋がってくるのか楽しみです

No title

めっちゃくちゃ続きが楽しみです!頑張ってください。

No title

一から五ってことはやっぱり娼館ですかね~
続きが楽しみです!

No title

娼館がくるのですか!!!
この先の展開がとても楽しみです!
ゲーム制作頑張ってください。

No title

一から五って、あの子たちまで来るとは・・・
期待ですなww

ご無沙汰です
震災の後片付けでゴタゴタしていましたので一気に読ませていただきました

やっぱり和みますねー
現実で疲れると寝る前に妄想したりするのですが
最近は内容にルイさんの影響が出てますよ(笑)

これからもこの世界を楽しませていただきます

No title

ひさびさに来てみたら更新あってうれしいです

書き方少しかわりましたか?
なんか表現しにくいですが違和感が…悪い意味じゃないですけど…

娼館の子達との絡みですか…?
次回更新を楽しみに待ってます

でわでわ

お返事

>>水無月
かんじゃう・・・のよ・・・!

>>スズケン
まだまだ続きますので、ぜひ楽しんでくださいませっ
はい、気をつけつつがんばりますねっ

>>rasan
おつありです!
あの子達をぜひぜひまっててあげててくださいねっ

>>しのぎ
はじめましてっ
陛下優しいですし、きっとみんなあつまってきちゃうんですね
主人公補正なんてなかった

>>たたりん
ふふふ、ぜひぜひ次回をおまちくださいっ

>>; ・`д・´)
あちらを読んでなくとも問題ありません!
だかぬしはだかぬしですから、向こうを読んでないからどうこうといったことはありませぬ!
だかぬしの一作品としてみていてくださいな

>>綱渡り
はじめまして・・・かな?
ぜひぜひ次回をおまちくださいな
きっとまちわびてくださった分だけ楽しめる物語をかきますので!

>>骨
コメント
ありがたし
次回
まっててね

>>都院
だれがうまいこといえと

>>KID
そうですね、そのつながりを是非期待していただけたらとおもいます!

>>悠炉
ぜひぜひおまちください!

>>すふる
いつも応援ありがとうございます、はげみになっておりますよw
はい、がんばりまっす!

>>貯金箱
ぜひぜひ期待しててください!
きっと応えられるはず・・・!

>>土嚢
おひさしぶりです!
震災大丈夫だったでしょうか、片付いたと言う事はとりあえずおちついたのかな?
おつかれさまです
妄想の世界でもメイドさんやっぱりいいですよね!w

>>ロニンデス
おひさしぶりです
そうですね、今回心理描写多めでした
だかぬしではいつも書き方を試行錯誤しているので、
今回だけ大きく変えた、というつもりではなかったのですけどねw
もうすこしライトなほうがよいのかな

>>ななしのみなさん
みなさんおつありなのです!
内容はきっと皆様の期待に応えられると思いますので
是非期待していてくださいねっ

ところで文章ですが、もう少し軽めの方がよかったでしょうか
今回は描写を少し濃い目にしていたのは、そちらの方が風景を捉えやすいかなと思ったためです
ご意見ありましたらぜひぜひ


それではしつれいしまっす!

久しぶりに見たらまさかのクロスオーバー展開とは

No title

おーぅ、リンクするのか、例の館の子等と・・・。

初めまして!

やっと追い付いた!←
たまたまSSまとめサイトで見つけてどっぷりはまって読んでました!
すごく楽しみにしてます(>ω<)


(こちらのサイトまで追い掛けてまさかの東方ktkr!とか思って無いんだからねっ!

No title

陛下だから…陛下だから…

周りにキモイと言われようとニヨニヨしながら読めると信じてる

頑張ってください

巡ってきました

SSサイトでハマってしまい、このブログまで来てしいました。
そこで、大変だとは思いますが登場人物のキャラクター一覧図みたいなのをつくってはもらえないでしょうか?
読み手のイメージは各々あるとは思いますが、るいるいさんの『この娘はこういうような感じ』というイメージを把握して、作品を読んでみたいと思うのです。

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プロフィール

あるてぃめっと☆るいるい

Name:あるてぃめっと☆るいるい
***
物語とか絵とかゲームとか、
色々つくることが大好きです。
基本は文章書き。

2014年4月以降で現在お仕事募集中です。
お気軽にご相談ください。
安くて早くて安心ね! を目標に。
メールのレスポンスは超早いです。

連絡先は以下です。
bagarana☆yahoo.co.jp
(☆を@に)

Twitterはこちら→Ul_Rui_Rui
(たぶんコレが一番頻度高いです。
 細かい情報は全部ここで済ませてたりする)

ニコニコ生放送もやってます
コミュ→co15316

よかったらみてやってくださいまし

以下は僕のpixivですわー



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