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だから愛しています”ご主人様” 桃

こんばんは、アルティメット星ルイルイです

梅雨に入りましたが、皆様いかがおすごしでしょうか
僕は熱くてジメジメしててきついのです

さてさて、そんな日々をぶっとばそうということで
新しい物語をひっさげてきました

今回は中々の力作とおもいます、自信作っ



それでは折りたたみからどうぞ!






桃色の舞台


それは可憐な桜吹雪。
桃色に染め上げられた眼前の世界に、他の混じる隙は無い。
暴挙の様に舞上がる様はまるで、自身以外の誰かが舞台に立つ事を頑なに拒んでいるようだった。
自分こそが主人公だ、と。
一際大きな風と共にその撫子が空へと散る。
それは幕引きの合図らしい。
風は止み、桜は何所へとも無く消えていった。
辺りに残ったのは、夜の静けさのみ。
男「うお……」
その演目が行われていた舞台の中心に、彼はいた。
男「桃……?」
彼はきょとんとした顔で私を見る。
その顔が心地よくて、私は上機嫌に一回転してみせた。
桃「こんにちは、ご主人様っ。ご無事ですかっ?」
フリルをいっぱいにあしらったピンク色の衣装は、自分でも相当似合っていると思う。
イメージしたのは、魔法も剣も使える格好良い魔法剣士!
男「あ、あぁ、無事、だけど……」
ご主人様はわけがわからないといった顔できょろきょろと辺りを見回す。
それもそのはず。
だってご主人様は、こちら側の世界を知らないんだからっ!
ご主人様の知らない世界を私が知っている。
それがなんだか心地よくて、私はくすっと笑ってしまう。
男「な、なんだよ」
桃「いえ、なんでもないですっ」
男「なんでもないってこたぁないだろ。つーかその服すごいな」
桃「金ちゃん特性ですから! ああっつ、魔法で作った衣装ですからららっ! かんでないっ!」
男「なるほど、すごい魔法だな。尊敬する」
後ろの方で「あぁ、ご主人様に褒められてしまいましたわ! 私嬉しくて死んでしまいそうっ」なんて声が聞こえたけど、きっとそれは気のせいと思って私は続ける。
桃「いえっす魔法はすごいんです! ……こほん。さてご主人様、実は貴方は今大変な危機に面しているんです!」
男「む? 生活費足りないか?」
桃「ちっがいますご主人様! それはとってもありがたいほど足りております! そうじゃなくてですね、ご主人様はなんと、命の危険をおびやかかかされて、いるのです! ごまかせた!」
男「ごまかせてないけどな。……で、命の危険?」
桃「そうでっスッ! 命の危険ですっ! ななななんとですね! 悪の組織、赤黒大魔王軍団ががっ、ご主人様を狙ってるのですよ!」
ピカピカッと辺りに光が走る。
うふふ、とっても雰囲気でてる!
男「む、む……? 悪の組織?」
桃「そうです悪の組織です! 奴らは今すぐにでもご主人様をねらってくるはずででっす!」
男「そりゃこまったな。……ってあぁ、そういうことか」
暗闇に目が慣れてきたのか、ご主人様は玄関の影を見据えて頷く。
一瞬そこに赤ちゃんと黒ちゃんがこれまた格好良い服を着て待機しているのが見えたけれど、きっとそれは気のせいと思って私は続ける。
桃「そういうことってどういうことですかもう! いいですか、命を狙われれれてるんですか、っらキンチョー感を持ってくだっささい!」
男「ん、あぁ、そうだな。命を狙われてるとあっちゃ俺ものんびりしてられないな」
ご主人様は苦笑してそう言った。
乗り気になってくれたらしい。
桃「そうですそうです、そうなんですよっ!」
男「分かった分かった。しかしだな、具体的に何すりゃいいんだ?」
桃「私に守られてください!」
男「あれ、俺は何もしなくていいのか? 悪の組織と戦うんだろ」
はっとして私は口を押さえる。
いけない、私が活躍してご主人様に褒められたいが一心に設定を忘れて――じゃない、魔法の力を与えるのを忘れていた!
桃「これをつかってください!」
ごそごそと服の中にしまっていたソレを、ご主人様に手渡す。
男「お、結構手込んでるな。魔法の杖か? これ」
桃「ですです、歴史あるチョー強力な魔法の杖なんででですよ! 一振りするだけで魔法がつかえちゃいまっすっす! 噛んだっ」
男「歴史ある杖にしてはめちゃくちゃイマドキ風だな。魔法少女だか白い悪魔だかがつかってそうな……ちょっと小さいけど」
桃「いいえ! 歴史ある杖です!」
男「あ、あぁ、そうか、そうだな。悪い。で、こいつを振ると魔法がつかえるんだったっけか。今やってみてもいいのか?」
桃「え、えーっと、ちょっとまってください、天界に問い合わせます!」
不意の質問に私はうろたえまいと、さっと木の裏へと飛び込んだ。
桃「緑ちゃんっ、今つかえる!?」
緑「大丈夫。あの目印の辺り目掛けて振ってもらって」
桃「わかったっ」
私が頷くと同時に、緑はポケットからトランシーバーを出す。
緑「ぴぴぴ、こちら緑。褐、準備」
褐「おっけー、任せて!」
私はそれを背中で聞きながら、すぐにご主人様の元へと戻った。
桃「大丈夫です! できればあのへん目掛けて使ってください!」
男「いいのか。裏方的な意味で駄目かと思……やってみるか」
ぶん、と一振り。ご主人様は軽くソレを振るう。
瞬間。
男「お、すげぇ」
ポッという破裂音がすると、まるで小さな花火のように光の粉が散らばった。
ピンポン玉のような物が明らかに別方向から飛んできて破裂したようにも見えたが、もちろん気のせいである。
男「本当に魔法使いになったみたいだな」
桃「いえっすその杖さえあれば魔法使いになったようなものです!」
男「そうだな。さて、次は?」
桃「えーと、次は……」
思い出そうとして頭をかしげる。
が、思い出す暇もなく一閃。
私を目掛けたそれが振りぬかれる。
銀「ちっ、かわされたかっ!」
銀色の甲冑に身を包みしは、その甲冑すらをしのぐ銀色を髪に称える少女。
桃「危ないっ、ごごご主人様、次は敵がきまままっす!」
男「きてからいわれてもな」
桃「すいませんっ!」
私はご主人様を庇うようにその少女と対峙した。
あぁ、すっごくワクワクする!
桃「名を名乗れれっ!」
銀「ふっふっふ、名を問う時は自分からという言葉を知らんのか!」
桃「ぐぐっ、わ、私はご主人様を守りし戦士、モモ!」
銀「モモか。私はえーと、赤黒大魔王軍団一の刺客――名前どうしよっかな……えーと――銀河鉄道スリーナイン!」
男「いやまてそれ適当すぎないか……」
銀「略してギンである!」
男「最初だけな」
ご主人様の突っ込みに、ギンはケラケラと笑う。
桃「ギン! 貴方は一体何をしにきた!」
そのキンチョー感のない彼女をきっと睨むと、ギンも気合を入れなおして私を見据える。
銀「わかっておろう! マスターハート――でしたっけ?――を盗みに来た!」
台詞の途中でちらっと銀が後ろを振り向き、その向こう、木陰からOKサインを紫が出す。なんていうやりとりが見えた気がするけどきっと気のせいだ。
桃「ふふん、礼儀として聞いたまで! マスターハートはご主人様のもの! けけ決してわたしませんっ!」
銀「ならば力ずくで奪うまでよ。勝負だ、モモ!」
銀髪の少女が腰を下ろし、手に持ったソレを構える。
銀「聖剣デュランダルの前に平伏すが良い……っ!」
桃「そう上手くはいきませんよっ! 私の魔剣レーヴァテテテインが応戦つかまつりもももっうす!」
男「えーと、おいてけぼりなんだが」
桃「ご主人様はバックアップをお願いします!」
男「バックアップ? データ?」
桃「後方支援ですッ!」
それだけ言うと、私は踏み込んできた銀の一撃を叩き落として戦いへと踏み込んだ。


男「後方支援たってなぁ……、どうすりゃいいんだか」
金「その杖を振ればいいのですわ、ご主人様」
男「お、金か。いやしかしだな、見てくれあれ。完全に素人じゃない戦いだぞ」
金「それは仕方ありませんわ。私達は元々自身しか助けの無い場所で生きてきましたから。自ずと身を守る術が身につくというものです。私も結構いけますのよ?」
男「え、そうなのか?」
金「えぇ。まぁコチラに来てからはほとんど……あぁ迷子の時に一度だけやりましたけど」
男「あ、そういえば。遠目に一瞬見えたな」
金「お恥ずかしいですわ……」
黒「ま、それでも素人の戦いだぞ、ご主人様。この国は平和だから良いが、あっちではいざこざなんて絶え間ないからな。喧嘩の仕方を覚えてるだけのようなもんだ」
男「女の子が喧嘩なんてとは思ったけど、環境がちがいすぎるしな。そんなもんなんかな」
黒「そんなもんだ。ほら金、持ち場に戻るぞ」
金「あうっ、ご主人様がどうしたものかと困っていらっしゃったのを見て、ついついでしゃばってしまいました……申し訳ございませんわっ、失礼しますっ」
男「あ……行っちまった。結局どこで振れば良いんだ。……とりあえず適当なとこで、かな」


桃「くっ!」
気の逸れた一瞬に、容赦なく銀色の閃光が叩き込まれた。
かろうじてあいていた”右腕で”それを受け止める。
ぼふんッ!
腕に乗せられたその勢いによってバランスが崩れ、たたらを踏みながら私は後退する。
銀「ふっふっふ、舐めちゃいけない!」
それは必殺の一撃だった。
にもかかわらずそこに殺は現れない。
何故なら私達は全力で剣を振るいつつも、殺し合いを望まなかったから。
そのうえでどちらもが容赦なくその剣を振るえるのは一重に魔法のおかげ。
剣は魔法によって殺傷能力のないものになっているし、纏っている服にはプロテクターという名の防御魔法が掛かっているのだ。
銀「よーし、このまま勝っちゃうぞ!」
桃「む、むむむ、負けませんっ!」
横一文字に薙ぐ聖剣の切っ先を、上体を後ろに逸らしてかわし、それを前へ進む反動として銀の懐に踏み込む。
銀「うわっ」
桃「よい、しょっ!」
地に向けた魔剣をアッパーのように一気にふりあげる。
渾身の一撃だったが、銀はスウェーバックの要領でそれを避けた。
当てるつもりで振り切ったために、あまった勢いで手が持っていかれそうになる。
私は慌てて体を捻って力の向きを変えると、勢いを殺さないように体をまわして振り切った。
だがもちろん受け止められる。
勢いを殺さないためと言えど、相手に一杯食わすためにはあまりにも一回転という動作は長すぎた。
銀「あっぶなっ、桃ちゃんやりますねぇ」
しゅっと一閃。返す刃で弾いて対峙。
桃「うー、絶対あたったとおもったのにっ!」
銀「それ、次っ」
二の句を接がせぬまま銀が振りかぶる。
男「桃ー、下がってくれ」
突如、気の抜けた――いや、りりしいご主人様の声が耳へと届く。
桃「はいっ」
私は嬉しくて、声高く返事をして後ろにとんだ。
そして目の前が光る。
銀「わっと」
ご主人様が杖を振ったのだ。
その小さな花火に、大きく銀の体が揺らぐ。
桃「もらいっ!」
私は体を前に倒して数歩駆けて剣を振る。
銀「あうっ」
銀の腹部を守る甲冑に、私の剣がしっかりと入った。
その手ごたえを感じながら一気に振りぬく。
桃「またつまらぬものをきってしまった!」
ばたっ。
腹を切られた銀が倒れる。
銀「うー、負けたー」
桃「うっふっふ、マスターハートは渡しません!」


勝利の余韻を持って、私はご主人様の元へと戻った。
桃「ご主人様、ご無事ですか!」
男「杖振っただけだしな」
桃「よかったよかった、怪我はないみたいですね!」
ぴょんぴょんと私は跳ねて抱きつく。
男「いろんな意味で当たり前だけどな。それより桃、銀も、大丈夫か?」
銀「大丈夫ですよー。この剣、中身空気ですしー」
さっきまで倒れていた銀が、けろりとした顔で起き上がる。
男「だよな。百円でうってるようなあれだよな。いやしかしそれをよくここまで形にしたもんだ。すごいな」
ご主人様は私達の持つ剣を見てそう言う。
銀「カラーリングは私です! 緑ちゃんとか茶ちゃんが形をつくってくれましたー。でもデザインは桃ちゃんだよね」
桃「ぶー、すっごいメタな発言だよもうっ。一時幕降ろしですねっ。そうですそうです、デザインは私でっす」
男「へぇ、すごいな。桃が企画なのか、これ?」
桃「ですです」
褒められたのはうれしかったが、私はうーと頬を膨らませる。
まだ途中なのにー。
女「銀河鉄道スリーナインがやられたようだな……」
茶「くくく……あの子は四天王の中でも最弱……」
赤「に、人間ごときに負けるとは大魔王軍団の面汚しよっ」
男「とりあえず一時中断だ」
女・茶「ぐあー」
赤「ほっ」
しかし実際の所、仕方なかったのだ。
ぱらぱらぱらと雨が降り出してしまったから。
女「せっかく待機してたのにー。みてよこの服! ちょうカッコイイっしょ!」
男「本当だな。いやそれは素直にすげーと思うよ。とりあえず中はいれ中」


ご主人様の掛け声で撤収が始まり、本降りになる前に終えることが出来た。
せっかく作ったのをネタ晴らしするのもつまらないということで、ご主人様には見せずにね。
青「うー、出番なし。ちょっと悲し」
男「雨だからな、仕方ない仕方ない」
聖堂の辺りに、自然に皆が集まっていた。
桃「またの機会にやろ! ねっ」
青「うん」
緑「桃がやる気なら大丈夫」
金「そうですわね。こと今回に関しては貴方の指揮は完璧でしたし、面白かったですし」
桃「お、おぉ!?」
男「そうだな、俺も急に玄関先に呼び出されたときは何かと思ったが……、予想外のクオリティの高さに驚いた」
桃「あう、私はデザインとかやること全部きめただけで、その、あんまり作業はしなかったた、から。役立たずですよよよっ!」
ご主人様にすごいなとぽんと頭を叩かれて、動転した私はそう答える。
赤「謙遜ですよぉ、桃ちゃん。皆をここまで乗り気にしたのはすごいと思いますっ」
桃「あううー」
さっきのは、一種のドッキリだった。
面白い物語とか武器とかを作って、皆でそれになりきって、ご主人様をびっくりさせる。
そんな楽しいことができたらいいななんておもいながら、武器や服、仕掛けの構成等など暇つぶしで考えていた。
それが実現したのが今日だ。
暇つぶしの妄想ともいえるソレは前々から皆に見られていた。
皆に褒められたから、気まぐれに「やってみよー!」なんて言ってしまったのが事の始まり。
思いがけないほど皆が乗ってくれた理由は分からないけれど、皆が楽しく参加してくれたのは間違いがない。
だからそう、私がやる気であれば皆が乗ってくれる。なんていう私に似つかない立場は、確かに存在していたのだ。
正直、困惑してしまう。
リーダーシップなんてもってるわけないし。もちろん得意じゃないし。
私はしばらく皆にはやし立てられるつつ、それを苦く笑って受け流すのだった。


また今度ちゃんとやろうね。なんて言って解散し、部屋へ戻る途中。
褐「今日、夜係だろ? 桃」
褐にそう言われて、私は心臓が止まるほど飛び上がった。
桃「へっ」
褐「あれ、違う?」
桃「はっ、はひっ、私です!」
困惑していたためか、私は一番忘れてはいけない事を忘れてしまっていたようだ。
今日は一ヶ月に二回しか回ってこない特別な日だったのに!
桃「ありがと褐っちゃんっ!」
褐「はいよー」
私は礼を言ってすぐに駆け出した。
なにやってるんだ私はっ。
だだだっと走ってすぐ。ご主人様の部屋へと辿り着く。
桃「とんとんっ、ご主人様ご主人様、桃がきましたよー!」
至って冷静に。忘れていたとはさすがに思われたくないっ。
男「ん、入って良いぞー」
桃「では失礼しまっす」
部屋に入るとご主人様はいつも通りパソコンに向かいながらなにやらカタカタとキーボードを叩いている。
男「ちょっと待っててくれな」
ご主人様は私に振り返って言った。
桃「了解でありますっ、本を呼んでますのでお気にせず!」
男「はいよ」
それだけ言うと、くるっと椅子を回してパソコンに向き直る。
桃「ふんふん♪」
こうしていても話しかければ付き合ってくれるご主人様ではあるが、私はあまり邪魔をしたくなかった。
外に出ているときとか、私達と話しているときとか、そういうときには絶対に見せない表情をここでだけは見せてくれるからね。
自分からそれをやめさせるなんてもったいない。
遊んでいる、とは女様にもご主人様本人からも聞いているけど……、それでお金を稼いでいるのなら、良いんじゃないかなーと私は思う。
ということで、ご主人様の邪魔をしないように私は本棚の前に立った。
桃「うーん……」
何を読もうかなと唸る。
ご主人様は驚くくらい多くの本を持っていて、そのほとんどはこの家の書庫――女様曰く高校以上大学以下の図書館――にある。
ここにあるのは、その中でもご主人様選りすぐりのものだ。
使える実用書とかご主人様が個人的に気に入っている本とかとか。
大半は専門の本ばかりで私が読んでもちんぷんかんぷん。
でもよーくみてみると、それとは一線を画する本がところどころにあるのだ。
女の子の絵が描いてある文庫本がちらほらと見えるけど、それだけはご主人様から読んじゃだめだって言われてるから読めない。
だからそれ以外で探すわけだが、そうなるともう数冊にまで限られる。
桃「やっぱりこれかな」
小声で呟いてその本を手に取ると、私は机に着いた。
このあかがね色の豪華な装丁をした私の顔くらいある大きな本は、何故かこの家に二冊ある。
それを知ったのは結構前だ。
元々、この部屋にこの本があるのはインパクトのある装丁だったから知っていて、こういう日に手にとってパラパラと捲っていた。
だがこの部屋の本は外に持ち出せない。
別に禁止されてるわけじゃないけれど、ご主人様が自ら近くにおいている本を持ち出す気にはなれなかったのだ。
だから面白いなとは思っていても、その本はほとんど読み進める事ができなかった。
……のだが!
私はあるオフの日、気まぐれで書庫に入ったときにもう一冊のこの本をみつけて驚いたのだ。
あれだけ大量の本の中からこの一冊を見つけられたのは本当に偶然。
だってそれはご主人様の部屋にあったそれとは違い、専用の紙でできたケースに入っていたのだから。
そもそも同じ本が二冊あるなんて思わないのも、それを偶然とすることに拍車をかけていた。
だってないものと思って掛かれば、実はあったとしても全然見つけられなくなるでしょ?
嬉しくて、私はそうして見つけたこの本をぎゅっと抱いたのを覚えてる。
赤がね色のハードカバー、表紙には二匹の蛇がお互いの尻尾をくわえたアウリンという名のお守り。
それは見ほれるほどに綺麗だった。
内容は王道も王道なファンタジー。
とっても読みやすかったけれど、大きさが大きさだから読み終えるのに数日かかってしまったっけ。
でもそのおかげで、次の夜係の日にこの部屋でその本を見たとき、全く同じ二冊の本の微妙な違いに私は気付けた。
ここにあるのは使い古された一冊で、書庫にあったのは新品同様の一冊だったのだ。
どちらも単品で見れば”こういう本なんだな”で終わってしまうような違い。
だけど比べてみれば違いは歴然。
私はそこでやっと、本が二冊ある理由に気付いたのだ。
そしてその理由だからこそ、私はご主人様に理由を聞かなかった。
桃「くす」
それを思って、押さえきれず吐息が漏れる。
男「ん~~~っ」
ご主人様がぐっと伸びをするのが見えた。
そろそろ終わりなのだろう。
私はご主人様が振り向かないうちに、さりげなくあかがね色の本を本棚へと戻す。
ご主人様に、私がこれを知っているのをばらすのはもうちょっと後。
あの本みたいに、びっくりさせてやりたいから。
男「ふぅ」
桃「終わりましたかっ」
男「あぁ。悪いな、結構時間くっちまった」
桃「いえいえ、私は”ご主人様の顔をみるのが面白かったので”構いませんよよっ! せーふっ」
男「……む、そういう言葉は苦手だ」
ご主人様は頭を掻きながら立ち上がる。
男「もう結構遅いが……、一杯もらえるか。甘いのがいい」
桃「いえっすおまかせっ!」
椅子を引いてご主人様に座ってもらってから、私は備え付けのポットで即席アールグレイを作る。
カップを二つとりだして少し高めから格好つけてそれを注いでから、角砂糖をぽいぽいと四つも投入。
最後にスプーンで軽く掻き混ぜて。
桃「はい、どーぞっ」
男「ん」
ご主人様の反対側に私も座って、彼が口をつけるのを見つめる。
皆も同じようなことやってるとは思うのだが、それでもご主人様はそういうことをすると毎回ちらりと目線で抗議する。
いやまぁ、それが可愛いんだけど。
男「……。うん。うまい」
桃「よっしっ」
ガッツポーズをとる私。
男「一人一人、茶の味が微妙に違って面白いな」
桃「ほほう? 私のはどんな味ですっかっ?」
男「うーん、子供っぽい?」
ガーンッ!
子供っぽいなんて!
桃「な、ななななんとっ、このナイスバディを持つ私に向かって、子供っぽぽぽいですとっ? 今すぐ見せ付けてあげます!」
男「わたたた、悪い悪い、座れ、脱ぐな、ちょっとまってっ」
桃「なんでですか!」
男「なんでもなにもない! 俺が悪かったから座ってくれっ」
桃「むむー」
男「ったく。俺は別に茶に詳しくないから、表現が上手くないんだよ」
桃「むぅー、結構おねーさんなのに」
男「一応褒めてるつもりなんだぞ。なんていうかこう、子供みたいに無邪気で楽しい感じって意味でだな」
桃「それは褒めているのかわかりませんっ! まったたくっ!」
男「本人が褒めてるって言ってるんだから素直にうけとりなさい」
桃「むむむむー」
一回ご主人様を篭絡してやろうかなんて考えてみる。
そうすれば私だって立派なおねーさんに見えるだろうし。
私だってあの場にいた人間。
ふふん、悦ばせ方なんて熟知してるんだから。
男「あ、あぁ、そうだ、えーと」
私のその怪しい考えを見抜いたのか、ご主人様は目を泳がせる。
男「あ、うん。今日のはすごかったな!」
桃「むぅ?」
男「ほら、今日のだよ。あの劇みたいなの」
桃「劇じゃないです現実ですっ」
男「あれが現実だったら……いやまて、あれは現実とも言えるか。うんまぁ桃の言ってる意味とは微妙に違うけど」
桃「なんとなく理解できますけどー、うー」
男「今日全部出来なくて心残りだったか」
桃「そうですよう。用意してる事がばれちゃったじゃないですかっ。雨のせいです!」
男「山の天気は変わりやすいからな。天気予報なんてあんまり当てにならん」
桃「ぶー」
男「まぁまぁ。次やればいいじゃないか、ちょっと知ってる方がむしろいいぞ、いきなりやられたら今日みたいに上手くできないけど、知ってればもっと上手くやれるさ」
桃「びっくりさせたかったんですよう」
男「今日十分びっくりしたよ。まだ続きがあるってんだから、楽しみにしてる」
桃「むぅ」
ご主人様め、私を丸め込むつもりかっ。
くそー、言い方がずるいー。
楽しみにしてるなんて言われたら文句言えないー。
男「実はさ、恥ずかしいんだが、俺ああいうの嫌いじゃないんだよ。今日はびっくりしたのものあるけど、本当にワクワクもしてたんだぞ。そう見えなかったかもだけど」
しってますよーだ。
だからやったんだもん。
男「桃より俺のほうが子供っぽいかもな」
桃「ふっふっふ、認めましたか」
男「うむ。あれだけ作れれば、子供なんていえない」
よーしさすが桃。
なんだかんだ言って、私ったら大人。
男「しかしあれ、いつからやってたんだ? 全然気付かなかったけど」
桃「うーんと、私が考え出したのは相当前ですよ。やりだしたのはここ一ヶ月くらい?」
男「リーダーなのに適当だな」
桃「リーダーじゃないですってばー。遊びでやってただけですもももん。かんでない」
男「はは。そうか。遊びであそこまでやるとは感服いたす」
桃「でもですよご主人様。あそこまですごくできたのは皆のおかげなんです。私としては、これ作って欲しいとかあれ作って欲しいとかわがまま言ってたらいつのまにか出来上がってたって感じなんです」
男「ふむ……、本人も気付かぬかくれた才能か」
桃「へ、変に持ち上げないでくださささいっ。遊んでで褒められるなんてダメです!」
男「いやだがな、それを言うなら俺もダメになるんだな」
桃「む」
男「元々デイトレも遊びで始めたって言ったろ。今だって遊びのつもりだし。なのにこうして君らにもてはやされてる。まぁだから、桃の気持ちもわからんではない」
桃「と、ということは、ご主人様もいやですかっ」
男「いやだったけど、慣れたかな。皆がそうしたいならそれでいいと思う」
桃「うぅ」
男「気にすんな。やりたいことやって褒められたらとりあえず受け入れとけ。その気がなくてもな」
桃「ご主人様さっきからずるいですっ、文句いえないッス!」
男「まぁまぁ」
私って単純なのだろうか、結構簡単に丸め込まれてる気がするっ。
でもでも……。
ご主人様と同じなら嬉しいなとか思っちゃう自分もいるわけで。
あーもう、ご主人様ずるいなぁ。
ご主人様は軽く笑いながら紅茶を飲み干す。
男「じゃ、寝るか」
桃「はーい」
私はその後片付けをしながら、ふてくされたようにそう答えてみせる。
するとご主人様はすでに入っていたベッドで自分から
男「全く。ほら、寝るぞ」
毛布を持ち上げてくれた。
桃「ふふっ」
それだけで私は一気に上機嫌。やっぱ単純かもしれない……。
電気を消してから、私はもぞもぞとその中にはいる。
これで誘ってくれたら……いやいや、ご主人様はそんなことしないか。
男「じゃ、また明日な」
ご主人様は私に背を向ける。
桃「……」
うーむ、このずるいご主人様をどうにかしてやりたい。
……。
よし。
桃「ご主人様、在り得ないような物語の中に入ってみたいとか思ってるの、実は知ってましたから」
男「っ!?」
ご主人様はさっき「ああいうの」と言って、明確に何がとは言わずにごまかしてた。
私じゃなければそれがわざと隠しているだなんて気付かないだろう。
だけどね、私はわかるのです。
桃「それで剣と魔法でお姫様を助けたりしちゃいたいわけですよねー」
男「な、なん、なん」
明らかに動揺を見せるご主人様。
桃「ではでは、おやすみなさいませ~」
男「……」
よし、最後に一本取った!


あかがね色の装丁の本。
それは無限に続く物語だった。
しかし現実と本の中の世界が重なり合った時、それは終わりへと向かう。
主人公は、普通であったはずの現実から唐突に空想であったはずの夢へと放り出される「あかがね色の装丁の本を持った少年」。
彼は人間として”この本”の中の世界を”この本”の中で終わらせるのだ。
それはなんと夢のある話だろうか。
本の中なのに、その少年も本を持っている。
もしかしたら。
”この本”を持っていれば、”この本”の中に入れるかもしれない。
だってそれを、”この本”が証明しているのだから。
そう思ってしまうほどの力が、そう思わせるだけの物語が”この本”にはある。
彼……ご主人様が望んだのは、これ。
古びた本と新しい本の二冊があった理由もこれ。
だからそれを知った私はそれを実現してあげたくて。
最初はファンタジーって面白いなんて思いながら作った私の空想を、現実へと昇華した。
つまり私がやったのは、ご主人様の夢の再現。
子供じみた夢なんて無いように振舞っている彼が、絶対にありえないと分かっていた彼が、それでも心の奥底で望んでいたからあの本はご主人様の部屋にあった。
古びた本がその夢の中身を教えてくれて、新しい本がご主人様のその夢を持っていることを証明していたのだ。
もちろん、私だってこういった空想の物語は大好きだ。
だからこそ、私にだけ再現できる。


あぁご主人様
貴方はこんなにも私達を包んでくれるというのに、実の所はなんて幼いのだろう。
本当は遊びたいくせに、環境がずっとそれを許してくれなかったのだろう。
したいものをしたいと言えない、そういう性格が今の彼を作ってしまったとご主人様のお母様は言っていた。
だから私達は、ご主人様が今まで出来なかったそれをかなえなければならない。
ご主人様の言うとおり、したいことをしながらね。
可愛いなぁとおもう。
だってそれ、ご主人様が自分に言い聞かせてるようなものじゃない。

ご主人様は優しすぎるのだ。
そしてとてつもない不器用なのだ。
だから苦手でも頑張って私達の世話をしてくれている。
そんな実は上手くない貴方がたまらなくいとおしい。

だから

だから愛しています”ご主人様”
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No title

最後の、ネバーエンディングストーリーでしたっけ?

うろ覚え。

No title

感想とかでなくて申し訳ないが
委託の話等はどうなったのでせうか

うん?これで終わり??

またもかわいい娘の楽しいほわほわしたお話をありがとうございます。

だかぬしの本、やっと届いたんで一気に読ませていただきました。

No title

きたたたー

No title

とりあえず

(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!

やっと桃キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
って感じでしたw

読むたびにそれぞれの絵を描いてほしくなりますw

久しぶりに日記みたら赤のイラストに桃のSSに大興奮、私は帰ってきた!!

今回のSSはほのぼのした話でほっこりしました
裏方で金が悶絶する所と、銀河鉄道スリーナインがやられた後の流れが、お約束なのに語呂の問題で若干台無しでたまらなかったw


いつになれば萌ルイルイさんに会いに行けるのだろうか……おのれ北国

No title

るいるいさんにブログ訪問されていろいろ感激やる気でた
やっぱ桃が一番かわいいお!

梅雨はジメジメして嫌ですね、その中でも時々爽やかな日があるので良いです

晴れだと日差しが暑いので曇りで湿度低くて涼しい日が良いですね

こちらは関東なのですがルイさんはどの辺なのでしょう

赤のイラスト可愛いですね~少しずつ描いていずれ全員分できるといいですね

読ませてもらいました、また良いストーリーですね~

とらのあなWebサイトでだか主の小説が販売されていますが、コミック版ができることを期待したいです

返事

>>Camus
ですですご名答っ
日本語訳の本には「はてしない物語」ってかいてあります

うーん、あえてタイトル隠して書いたんですけど
ちょっとわかりづらかったかなと反省してます

>>ロニンデス
ほわほわしていただけて幸いですです
本、ありがとう!
群青は大好きです

>>(; ・`д・´)
ポニテあざーっすっ
絵はねー、あんまりかけないんですよ
時間かかっちゃってw
時間あれば描きたいですけど、まぁあんまり期待しないでくださいw

>>私怨
おかえりなさいまし
金の使い方をやっと覚えてきたかなーと、そこを書いてて思いましたっ
金は可愛いけどあんまり前にでてこないほうがいいのかなとかとか
赤はいつもあんなかんじでぶったぎってくれるので助かります

いつか会いにきてくださいましっ

>>炉利狐
あしあとついてたので訪問させていただきましたっ
またチラミにしにいこうとおもいますw
桃は可愛いよ!

>>roy
たまーにカラッと晴れる辺り、きっと梅雨はツンデレなんだなーとか思ってます
ほら、雨を降らしまくるのがツンで、晴れるのがデレ
ってあほか
僕は秋葉原から一時間圏内の場所にすんでいますよー
イラストはチマチマかいていきまする
ただまぁ、コミックはちょっときついかなーっておもいます
漫画、大変なんですよねぇ・・・
これは全キャラ絵よりも期待薄かと、すいませんorz

>>ななしの皆様方
委託の話どうなったのか! とのことですが
とらのあな様にて既に委託中ですです!
ブログ見直してみたら「詳細を書きます」と書いた後何も書いてませんでした
すいませんorz
絶賛委託中ですので、よろしければ一冊もらってやってくださいっ

これで終わり? の件は、今は伏線ちらかし中だと思ってください
全キャラ終了後、続・抱かぬしを書こうと思っているので
そのときまでおまちくださいませ

きたたたー


ではでは、ありがとうございました!

No title

桃可愛いです!!

ご主人の家族とメイドさん達は接触してたんですね…!
その辺りのシーンも読んでみたいような。

No title

「はてしない物語」ですね。私も昔読みました。凄くいいですよねあれ^^

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No title

NeverendingStoryをやるのが桃(モモ)って処が気に入ったw

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あるてぃめっと☆るいるい

Name:あるてぃめっと☆るいるい
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物語とか絵とかゲームとか、
色々つくることが大好きです。
基本は文章書き。

2014年4月以降で現在お仕事募集中です。
お気軽にご相談ください。
安くて早くて安心ね! を目標に。
メールのレスポンスは超早いです。

連絡先は以下です。
bagarana☆yahoo.co.jp
(☆を@に)

Twitterはこちら→Ul_Rui_Rui
(たぶんコレが一番頻度高いです。
 細かい情報は全部ここで済ませてたりする)

ニコニコ生放送もやってます
コミュ→co15316

よかったらみてやってくださいまし

以下は僕のpixivですわー



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